投資信託を購入すると持っているだけで信託報酬と呼ばれる運用コストが発生しますが、これっていつ支払っているのでしょうか?
インデックスファンドを選ぶ場合、対象とするインデックスが同じであれば信託報酬が最も安いファンドを選ぶのがベストと言われていますが、発生するコストって正直わかりにくいですよね。とりあえずコストが低い投資信託を買ってはいるが、今までに一体いくら位払ってきたのか…それは他と比べて適正なのか…等。
投資信託に関するコストには大きく購入時手数料、監査報酬、売買委託手数料、信託財産留保額というのがあるので、わかりやすくまとめてみる事にしました。
投資信託のコスト早見表
まずは簡単に投資信託のコストを把握するために早見表を作成しました。
コスト | 支払い時期 | 概要 |
---|---|---|
購入時手数料 | 購入時 | 購入時に販売会社に支払う費用、ノーロードの場合はこれがかからない |
信託報酬 | 保有時、毎日 | 投資信託の保有額に応じて毎日支払う費用、通常は年率で表記されている |
監査報酬 | 保有時、毎日 | 決算時にかかる監査費用 |
売買委託手数料 | 保有時、毎日 | 有価証券等の売買時に売買仲介人に支払う手数料。事前にはわからない |
有価証券取引税 | 保有時、毎日 | 有価証券取引時に発生した税金 |
解約手数料 | 解約時 | 解約時に支払う手数料。解約手数料の発生する投資信託はごく少数 |
信託財産留保額 | 解約時 | 解約した分の証券売却等にかかる費用を分担する名目で徴収される費用 |
監査報酬および売買委託手数料(および有価証券取引税)は都度発生する費用ですが、いつ取引したのかはわからず信託報酬と同様に保有額から間接的に支払われていますので、投資家側から見たら毎日支払っているようなものと考えます。
また、これ以外に発生するコストについては運用報告書で「その他費用」という項目でまとめられている事が多いです。
先に結論ですが、信託報酬が支払われるタイミングは保有中、毎日という事になりますね。
以降ではこれらのコストについてもう少し掘り下げて書いていきます。
購入時手数料は購入時に一度支払う
投資信託を買う時は購入時手数料がかかるもの、かからないものがありますがこの費用は購入時に一度支払われるコストです。
購入時手数料がかからないものはノーロード投資信託と呼ばれていますが、自分でよく調べて投資信託を購入している人はノーロードを選択しているケースが多いと思うので、このコストは気にする必要はないでしょう。
信託報酬は毎日支払う
信託報酬は投資信託を保有中、毎日支払わなければならないコストになります。基準価額が上がっても下がっても365日支払いますが、個人の口座残高から引かれているのではなく信託財産(ファンドが保有している資産)から間接的に払っています。
投資信託の基準価額は信託財産から運用コストを引いて算出されているので、特に意識しなくても勝手に毎日引かれているコストとなります。
信託報酬の年率が1%。保有額が100万円の場合は「年間で1万円、1日27.39円程度」のコストが発生するとざっくり見積もれますが、保有額から信託報酬分が毎日目減りしていくのでこれはあくまでも目安になります。
基準価額の上下によっても日々支払った信託報酬は変わるし、ファンドの手数料見直しで信託報酬が上下する事もあるし、実質コスト(隠れコスト)を計算しないと本当のコストとは言えないという事もあり、厳密に計算しようとすると面倒です。
実質コストはファンドの決算時に発表される運用レポートを見ればわかるので、毎年自分の保有額と実質コストを計算すれば支払った本当の信託報酬が計算できますが、年率でどれくらい支払っているのかさえ把握しておけば良いのではと考えています。
以降ではこの実質コストについて掘り下げて書いていきます。
信託報酬の他に実質コスト(隠れコスト)と呼ばれるものが存在する
上記で実質コスト(隠れコスト)というワードが出てきましたが、ここではこれが何かを解説します。
投資信託の目論見書やファンドのホームページには信託報酬が記載されていて、投資信託を選ぶ時にこれが低いものを皆さん探しているかと思いますが、目論見書ではわからない運用してみて初めてわかる全体の運用コストがこの実質コスト(隠れコスト)になります。
早見表にも簡単に書きましたが売買委託手数料は株や債権を買った時にしかわからないので、そういう変動するコストが影響してきます。
なので、運用後にはなってしまいますが信託報酬とそれ以外のコストを含んだ、実質コスト(隠れコスト)を確認するのが実は重要です。
実質コスト(隠れコスト)に含まれるコスト
上記で実質コスト(隠れコスト)を見ないと本当のコストがわからないと書きましたが、信託報酬を除く下記コストを算出すると実質コストがわかります。
- 監査報酬
- 売買委託手数料
- 有価証券取引税
- ファンドオブファンズの信託報酬
- ファミリーファンド方式の管理報酬等
- その他費用
監査報酬はその他費用に含まれている場合が多いです。
ファンドオブファンズおよび、ファミリーファンド方式は目論見書等で目にすると思いますが、簡単にこのような違いがあります。
ファンドオブファンズは複数の投資信託に投資する投資信託という意味で、「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」等がこれに該当します。
ファミリーファンド方式は「楽天・全米株式インデックス・ファンド」等がこれに該当し、複数のベビーファンドが投資家から資金を集め、マザーファンドで集めた資金をまとめて運用するスタイルとなります。マザーファンドは投資家が直接投資できないファンドとなっています。
違いの説明はこれくらいにしておきますが、どちらもその先の投資先へ支払うコストが発生します。
実質コスト(隠れコスト)の計算方法
では実際に実質コストを計算して、投資信託を保有しているとかかるトータルコストを確認してみます。
今回は私が保有しているの下記二本の投資信託で算出してみます。
- <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
計算条件はこのようになります。
- 信託報酬年率は交付目論見書の数値を利用する
- 実質コストは運用報告書「1万口当たりの費用明細」にある信託報酬以外の数値を利用する
- 数値は全て年率で計算
- 信託報酬年率に費用明細から算出した年率を加算してトータルコストを計算する
- 小数点第3以下は四捨五入する
実質コスト = 信託報酬年率① + 実質コスト③(1万口当たりの実質コスト②÷運用日数×365)
ニッセイTOPIXインデックスファンドの実質コストを計算
交付運用報告書の対象期間は「2017年2月21日~2018年3月20日(365日)」で計算してみます。
項目 | 年率 |
---|---|
信託報酬 | 0.17172% |
売買委託手数料 | 0.002% |
その他費用 | 0.006% |
実質コスト | 0.178% |
もし100万円保有していたら年間に1,780円位は信託報酬を払っていると考えられます。
ニッセイTOPIXインデックスファンドは目論見書の信託報酬年率と実質コストの開きはそこまで無さそうですね。
楽天・全米株式インデックス・ファンドの実質コストを計算
交付運用報告書の対象期間は「2017年9月29日~2018年7月17日(292日)」で計算してみます。
こちらはきっちり1年間の数値ではないため、「数値÷292日×365」で年率に変換します。
項目 | 年率 |
---|---|
信託報酬 | 0.1296% |
投資対象(VTI)の経費 | 0.04% |
売買委託手数料 | 0.096% |
有価証券取引税 | 0.000% |
その他費用 | 0.036% |
実質コスト | 0.302% |
もし100万円保有していたら年間に3,020円位は信託報酬を払っていると考えられます。
楽天・全米株式インデックス・ファンドの信託報酬は「年0.1696%(税込)程度」と記載されている事が多いですが、上記では詳細化するために信託報酬と投資対象(VTI)の経費に分けました。
実質コストが目論見書の信託報酬とだいぶ違いますが、コストが膨らんだ理由は 『運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について』というレポートで原因が報告されています。
この実質コストの比較に「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」がよく持ち出されていますが、目標とするインデックス対象がそもそも違うので実質コストが高いならスイッチングだ!と思われた方はご注意ください。S&P500は米国の主要500社、VTIは米国の企業約3500社なので中身がだいぶ違います。
解約手数料、信託財産留保額は解約時に一度支払う
最後に解約手数料、信託財産留保額というコストもありますがこちらは解約時に一度支払うものになります。
解約手数料を設定している投資信託は少ないそうですが、信託財産留保額は「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」等で設定されています。
解約するとそのファンドは保有資産を換金して投資家に返しますので、信託財産留保額はそれにかかる経費という扱いになります。
信託財産留保額がかからない投資信託も多いので、コストを意識する時は解約時の事も考えた方が賢明かと思います。
まとめ:投資信託を買う時は実質コストも調べる
最後に投資信託のコストについてまとめます。
投資信託の信託報酬は毎日支払う必要があり、実質コスト(隠れコスト)が本当の運用コストになるので投資信託の購入を検討する場合は、実質コストも計算するようにした方が良さそうです。
ただし、実質コストは運用が始まってみないとわからないコストでもあるので、運用期間や純資産総額等の他の指標とも合わせてしっかりとした商品を選びたいところです。
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