GPIFが取り組むESG投資とは何か?年金マネーが流れ込む銘柄分析

株式投資

株式市場のクジラと比喩される巨大機関投資家の『GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)』が取り組むESG投資が話題となっております。

ESG投資とは『環境(Environment)』『社会(Social)』『ガバナンス(Governance)』の頭文字を合わせた言葉だそうで、企業の財務情報だけで投資判断をするのではなく、これらの非財務情報も加味して投資をする手法のようです。

小難しい話ですが要約すると、短期間の利益を追求するのではなく、環境や雇用(日本の場合は女性雇用の拡大)にも取り組むホワイト企業へ投資して、長期的にリターンを得ましょうという事らしいです。

GPIFは日本株式に34兆円も投資する世界最大の機関投資家なので、長期にわたって安定したリターンを獲得するために、投資先の価値が持続的に高まることを重視しているそうです。

GPIFは既にESG投資を始めているそうですが、クジラがこう言っているのですから私のような長期投資をする個人投資家も、コバンザメのようにくっついて行くのが得策だと思います。

そこで今回は、GPIFが買うかもしれない銘柄群を分析してみます。

GPIFが採用したESG指数

GPIFはESG投資をするのに、指数を使いパッシブ運用していると公表しています。

パッシブ運用とはインデックス投資でお馴染みのベンチマークに連動するような投資スタイルの事で、選定したESG指数に連動するようにGPIFが投資するという事は、そのリストにある銘柄は今後上昇する(もしくは安定しやすくなる)という事に繋がります。

GPIFの公開資料によるとESG指数には下記3つを採用しています。

FTSE Blossom Japan Index

環境、社会、ガバナンス(ESG)対応の優れた日本企業のパフォーマンスを測定する指数。

環境、社会、ガバナンスの実践に関する明確で透明性の高い基準を満たす企業を組み入れ。

MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数

親指数(MSCIジャパンIMIトップ500指数:時価総額上位500銘柄)構成銘柄の中から、業種分類の時価総額50%を目標に、ESG評価に優れた企業を選別して構築される指数。

MSCI日本株女性活躍指数 (WIN)

性別多様性に優れた企業を対象にして構築された指数。

高いレベルで性別多様性を推進する企業は、将来的な労働人口減少による人材不足リスクにより良く適応できるため、長期的に持続的な収益を提供すると考えられる。

3つの指数から読み取れる事

それぞれの指数の説明は公式からの抜粋ですが、このような意味を持つ指数だそうです。

特に興味深いのが『MSCI日本株女性活躍指数 (WIN)』で、これはアベノミクスの成長戦略『女性の活躍推進』と関係しているだけに見逃せない指数です。

また、今後は企業の人材不足が懸念されていますが、ESG指数に組み入れされている企業は『ホワイト企業』と呼ばれている所も多いため、社員の定着率が高いのも特徴だと思います。

普通に考えて離職率が高いのは企業にとってはもマイナスなはずなので、成長の妨げ要因にもなります。

労働環境が良く優秀な社員が集まりやすい企業はその分成長も見込めるという事でしょうか。

この考えは長期投資をする上で非常に参考になりそうです。

GPIFが投資するESG銘柄(新コア66銘柄)

次に、GPIFが投資すると思われるESG銘柄について分析します。

GPIFは上記で解説した3つの指数に連動する投資を行うとしているので、そのリストに入っている銘柄はどれも要チェックだと思います。

特に、3つの指数全てに含まれている銘柄(新コア66銘柄)や、組入比率の高い銘柄はGPIFがそれだけ購入してくるという事にもなるのでチャンスだと思います。

週刊現代で『「年金マネー3兆円」注入でこれから確実に上がる「66株」全実名』というセンセーショナルなタイトルの記事を参考に、3つの指数全てに含まれている銘柄をリストアップします。

また、長期投資には欠かせない利回りも同時に確認していきます。

銘柄 業種 ESGスコア ESG格付け 多様性スコア 株価 (9/28) 予想配当利回り
コニカミノルタ(4902) 電気機器 4.3 A 5.5 943 3.18%
シスメックス(6869) 電気機器 4.2 AA 6.1 7,240 0.82%
日本電気(6701) 電気機器 3.8 A 7.2 3,020 1.98%
パナソニック(6752) 電気機器 3.6 AA 6.1 1,617.50 1.54%
カシオ計算機(6952) 電気機器 3.5 BBB 5.4 1,580 2.53%
富士電機(6504) 電気機器 3.4 A 5.4 621 1.77%
オムロン(6645) 電気機器 3.3 AAA 6.9 5,740 1.18%
ウシオ電機(6925) 電気機器 3.3 A 6.4 1,502 1.73%
三菱電機(6503) 電気機器 3.2 A 5.8 1,736 1.84%
横河電機(6841) 電気機器 3.1 AA 5.8 1,893 1.58%
アズビル(6845) 電気機器 3.0 AA 5.3 4,685 1.75%
小松製作所(6301) 機械 3.5 AA 5.1 3,192 1.81%
クボタ(6326) 機械 3.2 A 4.9 2,051.50 1.46%
NTN(6472) 機械 2.7 A 5.2 477 3.14%
荏原製作所(6361) 機械 2.8 AA 7.5 3,735 1.60%
ニコン(7731) 精密機器 3.8 BBB 5.1 1,961 0.81%
島津製作所(7701) 精密機器 2.5 A 5.8 2,209 0.99%
東京海上ホールディングス(8766) 保険業 4.1 A 7.5 4,448 3.59%
T&Dホールディングス(8795) 保険業 4.1 A 8.3 1,614.50 2.16%
SOMPOホールディングス(8630) 保険業 3.8 AA 7.3 4,414 2.49
第一生命ホールディングス(8750) 保険業 3.5 BBB 7.8 2,025 2.22%
りそなホールディングス(8308) 銀行業 2.8 A 7.9 574 3.48%
ヒューリック(3003) 不動産業 2.1 A 7.8 1,107 1.62%
三菱UFJリース(8593) その他金融業 2.5 A 6.6 596 2.51%
KDDI(9433) 情報・通信業 4.0 AAA 6.9 2,953 3.04%
野村総合研究所(4307) 情報・通信業 3.9 A 6.9 4,245 2.12%
SCSK(9719) 情報・通信業 3.8 A 5.3 4,690 2.02%
NTTドコモ(9437) 情報・通信業 3.7 AAA 5 2,556 3.91%
大阪瓦斯(9532) 電気・ガス業 3.6 AAA 6.1 2,113.50 2.36%
東京瓦斯(9531) 電気・ガス業 3.1 AA 6.3 2,817.50 1.95%
昭和シェル石油(5002) 石油石炭製品 2.8 AA 6.7 1,294 2.93%
日本郵船(9101) 海運業 3.7 A 7.2 2,369 0.00%
商船三井(9104) 海運業 3.4 BBB 7.5 3,410 0.58%
西日本旅客鉄道(9021) 陸運業 2.7 A 4.9 7,862 2.03%
味の素(2802) 食料品 3.6 AA 7.3 2,152 1.39%
ニチレイ(2871) 食料品 3.2 A 8 2,783 1.07%
キッコーマン(2801) 食料品 3.1 A 7.1 3,415 0.99%
日清製粉グループ本社(2002) 食料品 2.9 BBB 6.1 1,878 1.49%
日立化成(4217) 化学 3.5 AA 5.1 3,090 1.94%
資生堂(4911) 化学 3.2 BBB 9.6 4,389 0.56%
ライオン(4912) 化学 3.3 BBB 6.9 2,042 0.73%
クラレ(3405) 化学 3.0 A 5 2,102 1.99%
三井化学(4183) 化学 2.9 BBB 6.4 3,415 2.34%
昭和電工(4004) 化学 2.8 A 5.2 3,585 1.67%
帝人(3401) 繊維製品 3.0 AA 5.2 2,211 2.71%
アステラス製薬(4503) 医薬品 3.3 A 7.8 1,423 2.52%
中外製薬(4519) 医薬品 3.2 A 7.6 4,575 1.26%
協和発酵キリン(4151) 医薬品 3.1 A 8.5 1,886 1.32%
大日本住友製薬(4506) 医薬品 2.9 A 6.4 1,478 1.35%
田辺三菱製薬(4508) 医薬品 2.9 BBB 6.5 2,584 2.55%
住友林業(1911) 建設業 3.3 A 5.6 1,743 2.29%
大林組(1802) 建設業 2.9 AA 5.4 1,355 2.06%
大成建設(1801) 建設業 2.8 A 5.8 5,790 1.72%
鹿島建設(1812) 建設業 2.5 A 5.5 1,097 1.82%
積水ハウス(1928) 建設業 2.6 AA 5.7 1,884.50 3.97%
TOTO(5332) ガラス土石製品 3.7 A 5.9 4,735 1.47%
日本特殊陶業(5334) ガラス土石製品 2.8 A 5.6 2,383 2.26%
日立金属(5486) 鉄鋼 3.1 A 6.4 1,570 1.65%
丸井グループ(8252) 小売業 3.3 BBB 8.5 1,588 2.32%
イオン(8267) 小売業 2.9 AA 7.5 1,663.50 1.80%
ローソン(2651) 小売業 2.6 AA 7.3 7,340 3.47%
日立ハイテクノロジーズ(8036) 卸売業 3.1 A 5.7 4,090 1.83%
オリエンタルランド(4661) サービス業 3.0 A 7.6 8,477 0.47%
アシックス(7936) その他製品 4.2 AA 6.4 1,684 1.39%
大日本印刷(7912) その他製品 3.3 A 5.5 2,707 2.36%
ヤマハ(7951) その他製品 3.2 A 6.4 4,100 1.36%

株価と予想配当利回りは2017年9月28日の情報を元にしています。

なお、各指数の銘柄リストは下記をご参照ください。

高配当&高ウェイトのESG銘柄

このリストの中で高配当かつ、指数への組入れ比率が高いESG銘柄をピックアップしてみました。

銘柄 FTSE リーダーズ指数 女性活躍指数 予想配当利回り
アステラス製薬(4503) 1.30% 1.58% 3.60% 2.52%
NTTドコモ(49437) 0.92% 1.95% 2.73% 3.91%
KDDI(49433) 1.45% 2.90% 5.02% 3.04%
東京海上ホールディングス(48766) 1.32% 1.70% 0.93% 3.59%

マンパワー分析のため漏れもあるかもしれませんが、私の投資戦略的にも上記銘柄は最も相応しそうです。

この中で私のポートフォリオに含まれていないのは、アステラス製薬(4503)とKDDI(49433)です。KDDIはドコモと業種が重複してしまうため、次はアステラス製薬を組み入れてみようかなと考えています。

(追記)9/29にポートフォリオに組み入れました。

その他、組入れ比率は少ないものの新コア66銘柄に含まれている高配当銘柄、コニカミノルタ(4902)、ローソン(2651)、積水ハウス(1928)、帝人(3401)あたりも検討中です。

積水ハウスは現在保有中でこの後も買い増していく予定だったので、より安心して買えそうな気がしています。

女性が活躍するなでしこ銘柄にも注目しておきたい

GPIFの新コア66銘柄の他に、経済産業省が公表している『なでしこ銘柄』にも注目しておきたいと考えております。

人材不足を補うのに女性の社会進出がより不可欠となれば、必然とこれらの企業に注目が集まるからです。

上記の3指数に加え、このなでしこ銘柄にも投資対象が含まれていれば、より安定したリターンが見込めそうです。

なでしこ銘柄の一覧

まとめ

以上が、GPIFが取り組むESG投資についての銘柄分析となります。

投資用語は難しい物だらけで細部まで理解している訳ではないものの、ESG投資の大まかな考えとGPIFの行動予測が理解できれば長期投資にプラスになるのではと思い調査してみました。

長いものには巻かれろ、寄らば大樹の陰というように、長期投資をするならGPIFに近寄っておいて損はない気がしています。

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